大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)402号 判決 1960年6月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人佐藤庄市郎、同松井元一の上告趣意第一点について。

所論行政協定は特に国会の承認を経ていないけれども、違憲無効と認められないことは、当裁判所大法廷の判例とするところである(昭和三四年(あ)七一〇号同年一二月一六日大法廷判決、刑集一三巻一三号三二二五頁)。所論は採用することはできない。

同第二点および第三点について。

外国為替及び外国貿易管理法にいう「対外支払手段」とは、外国通貨その他通貨の単位の如何を問わず、外国通貨をもって表示され、または外国において支払手段として使用することのできる支払手段をいい(六条一項八号)、軍票は「昭和二七年政令一二七号日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令」二条一〇号によれば、合衆国政府が発行し、且つ、合衆国通貨をもって表示される対外支払手段たる軍票をいうと規定されているのであって、米国軍票は外国為替及び外国貿易管理法六条一項八号にいう「対外支払手段」に該当すること、および前記政令一二七号四条の性格は、右法律二一条の委任命令にほかならないものであることは、すでに当裁判所判例の示すところである(昭和三一年(あ)三三八号同三三年七月三一日第二小法廷決定、刑集一二巻一二号二七九二頁)。所論違憲の主張は、その前提を欠くものであって採ることはできない。

同第四点について。

軍票の日本銀行に対する寄託義務を定めている政令一二七号四条二項の規定は、単に対外支払手段等の集中制度の一つとして軍票に対する所有権の行使を制限したにとどまり、これを剥奪する趣旨のものではないから、所論違憲の主張も、その前提を欠くものであって採用することはできない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例